ある家に、カナという女の子がいました。

カナはいつも、裏庭の空き地へ行き、段ボールに捨てられたノラ猫の面倒を見ていました。

ノラ猫は、カナを母親だと思っていました。

ある日、カナが帰るあとを、ノラ猫はついて行きました。

 

信号のない道をカナがサッと、渡りました。

ノラ猫は急いであとを追いました。

「キキキキーッ。」激しいブレーキ音に、カナは振り返りました。

すると、ノラ猫がダンプに跳ねられてしまいました。

カナは、慌てて駆け寄りました。

ノラ猫は、ぐったりしていました。

カナはすぐに、ノラ猫を抱き抱え、家に帰りました。

カナは、両親に相談して病院へ連れて行ってもらいました。

両親が、ノラ猫を連れて帰ってくるまで、カナは、公園に走り出しました。

公園には、カナが毎日お祈りをする、お地蔵様がおりました。

「お地蔵様、お地蔵様。私の大事な友達がダンプに引かれてしまったの。ぜったい、ぜったい、助けてね。」

カナは、お小遣いを全部、お地蔵の前に置きました。それから急いで、家に帰りました。

家へ帰ると、両親に抱かれたノラ猫が、元気に鳴いていました。

「良かった。助かったのね。」カナは、両親に頼み込みました。

ノラ猫を、家で飼わせてほしいと…。

両親は、カナの産まれて初めてのお願い事に、びっくりしながら許してくれました。

カナはニッコリほほえむと、ノラ猫をおいて、家を飛び出しました。

お地蔵に会いに行ったのです。

「ありがとう。本当に私の願いを叶えてくれて、ありがとう。今度はお地蔵様の番よ。私に何か頼み事はないかしら?なんでもいいから、教えてね。」

カナは、お地蔵にそう言うと、ノラ猫の待つ家へ帰りました。

 

ノラ猫は、カナに飛びつきました。

ノラ猫は、また、自分が捨てられたんだと、ショックを受けていました。

カナはノラ猫に言いました。

「あなたの名前はシロよ。よろしくね、シロ。」

ノラ猫は、なんだか恥ずかしそうでした。

自分に名前が与えられるとは、想像していませんでした。

カナに、シロ。と呼ばれる度に、しっぽを振りながら、駆け寄って、カナの首もとに、くるまりつくのでした。

もちろん、今日からカナと同じ布団に寝起きします。

 

夜、布団の中にいるカナとシロは、本当の親子のようでした。

「おやすみ、シロ。」そう言って、カナは目をつむりました。

カナがウトウト寝ていると、カナの名前を呼ぶ声がしました。

カナは、呼ばれた方へ歩いて行くと、お地蔵様が立っておられました。

そして、お地蔵は言いました。「願いを聞いてくれるかのう?」

カナは答えました。「なんでもいいから、言ってみて。」

「私は、産まれてきてから、丸裸。1度でいいから、服というものを着てみたい。」

カナは、答えました。「そんなの、朝飯前よ。」

そう言って、カナは、ハッと目を覚ましました。

そして、タンスから、毛糸を取り出しました。

お地蔵様の服を編む為でした。

カナは、母親に教わりながら、帽子と、チョッキを編み始めました。

母親は言いました。「お友達に、赤ちゃんでも産まれたの?」不思議そうに聞きました。

カナは答えました。「その赤ちゃんが、私の友達なのよ。」

母親は、笑いながら、カナに編み方を教えました。

帽子と、チョッキを完成させると、カナは、懐にシロを抱いて、お地蔵様の待つ場所に急ぎました。

「やっとできたわ、お地蔵様。今日は助けてくれたシロも一緒よ。すぐ着せてあげるわ。」

カナは、お地蔵様に服を着せてあげました。

お地蔵様は、なんだかとっても、嬉しそうでした。