ホー、ホー。
フクロウのチョビが鳴いています。
木に登って、リスのピッピが聞きました。
『どうして、こんな真夜中に鳴いているんだい?』
チョビは、目から涙を流していました。
ピッピは、心配そうに言いました。
『何かあったのかい?』
チョビは、首を振りました。
そして、ボソッと答えました。
『眠れないんだ。』
『えっ。』
ピッピは、びっくりしました。
『なんだって?眠れないって、こんな真夜中にかい?』
ピッピは、眠い目をこすりました。
『もう、1週間近く眠れないんだ。』
チョビは、辛そうでした。
『こんな時は、長老の野良犬ドン様の所に行くしかない。
僕が案内してあげるよ。
ガレキの上のてっぺんに住んでいるって、うわさだよ。
まだ、1度も姿を見た事ないけど。
なんだか、ワクワクするよ。』
ピッピは、楽しそうでした。
チョビは、ピッピの誘いに、重い腰を上げました。
『野良犬かあ…。噛みつかないだろうな?』
チョビは、不安そうでした。
2人は、ガレキの上にはい上がり、てっぺんを目指しました。
1時間くらい経ったでしょうか、やっと、てっぺんにたどり着きました。
わらぶき屋根が、ポツンとありました。
ピッピは、ひどく興奮していました。
うわさの長老ドンに会えるのです。
チョビはまだ、不安そうでした。
その時です。
わらぶき屋根から、5、6頭の野良犬らしきものが出てきました。
ピッピとチョビを囲みました。
『こんな所で何してる?』
するどいキバを見せ、聞いたこともないようなドスのきいた低い声でした。
これには、ピッピも、ビビリました。
『長老ドン様に会いに来たんです。』
蚊の鳴くような声で、ところどころ、声が震えていました。
ピッピは、精一杯答えました。
野良犬のボスは『何の用だ。』
ちょっと、イライラしていました。
『僕の友達のチョビが眠れなくなって、長老に助けてほしいんだ。』
ピッピは、今度は、堂々と答えました。
このおしもんどうで、長老が起きてきました。
『何の騒ぎだ。』目をこすりながら、出てきました。
さすが長老です。
野良犬が、狼のような風格をただよわせ、立派なものでした。
ピッピは、チョビの為に、長老の前に伏せて頼みました。
『友達が眠れなくて困っているんだ。助けて下さい。』
長老は、ピッピの真剣な懇願に、口を開きました。
『古くから、野良犬の玉袋の干しものを湯に入れて飲むと、精神が安らぎ、眠りにつけるという。
これは、我らの初代1匹狼リュウ様の玉袋を干した貴重なものだ。
危険をおかしてまで来たお前達に譲ろう。』
そう言って、木箱を渡されました。
チョビは、ちょっとずつ、お湯にとかして、夜飲み続けました。
どうした事でしょう。
チョビは、玉袋の力を借りて眠れるようになりました。
お礼に、ピッピとチョビがあのガレキのてっぺんに行くと、そこはもう、もぬけのからでした。
10月23日 ビンゴクリニックにて。