ある、大きなほら穴に、コウモリ達が住んでいました。

お兄ちゃんの涼君は、あみを持って出かけました。

涼君は、あみで捕まえたコウモリの赤ちゃんを連れて帰ってきました。

 

妹の未央ちゃんは、かけよってきました。

涼君は早速、自分の部屋ヘ、コウモリの赤ちゃんをつれて入りました。

「キュッ、キュッ、カタカタカタッ。」と、必死に鳴いていました。

コウモリの赤ちゃんは、お母さんに会いたくて仕方ありませんでした。

未央ちゃんは、毛布と、ミルクを持ってきました。

でも、まったく口にしませんでした。

未央ちゃんが、コウモリの赤ちゃんをよく見ると、涙をためていました。

1滴、また1滴と、涙が落ちる度に、未央ちゃんは胸を痛めました。

 

「ねぇ、お兄ちゃん、コウモリの赤ちゃんをお母さんの所に返してあげようよ。」

「…」

お兄ちゃんは、何も答えませんでした。

お兄ちゃんは、コウモリの赤ちゃんを、ペットにしようと思っていたのです。

未央ちゃんは、自分の部屋ヘ戻り、財布を持って外ヘ、飛びだしました。

未央ちゃんの着いた所は、近所のぬいぐるみ屋さんでした。

未央ちゃんは、コウモリのぬいぐるみがないかと、店員さんに聞きました。

店員さんは、首を横に振りました。未央ちゃんは、店員さんに、事情を説明しました。

 

「それは、かわいそう。」店員さんは、言いました。

赤ちゃんを横取りされたお母さんは、ショックを受けているに違いないと、店員さんは未央ちゃんに言いました。

未央ちゃんも、店員さんと同じ気持ちでした。

それでも、何もしようがありませんでした。未央ちゃんは、家ヘ、帰りました。

すると、お兄ちゃんの涼君が、大慌てで、かけよってきました。

「コウモリの赤ちゃんが、息をしてないんだ。」

これは、一大事です。未央ちゃんも、大慌てで、お兄ちゃんの部屋へと急ぎました。

戸を開けると、グッタリしたコウモリの赤ちゃんが、いました。「だから、言ったじゃない。」未央ちゃんは怒りました。

「どうしよう?」お兄ちゃんの涼君も、困っていました。

「私が、何とかするわ。」未央ちゃんは、言いました。

そして、未央ちゃんは、また、外ヘ、飛びだしました。

未央ちゃんは、友達の、香ちゃんの家ヘ行きました。

未央ちゃんは、香ちゃんを見るなり、「助けて。」と、香ちゃんの身体を揺さぶりました。

「どうしたの?」香ちゃんが聞くと、未央ちゃんは、事の成り行きを説明しました。

でも、香ちゃんは、自分に何が出きるか、わかりませんでした。未央ちゃんは、必死に言いました。

「香ちゃんの家の隅っこに、ツバメの巣があるでしょ?あの巣の中にコウモリの赤ちゃんを入れてほしいの。

グッタリして、今にも、死にそうなの。お願い。」

未央ちゃんは、コウモリの赤ちゃんの母親がわりをツバメにと、考えたのでした。

香ちゃんも、やっと理解でき、両親に頼みました。

コウモリの赤ちゃんは、無事にツバメの巣ヘと、まぎれ込みました。

あとは、ツバメのお母さん次第でした。

ツバメのお母さんは、コウモリの赤ちゃんを自分の子供と同じくらい、愛情を注いでくれました。

元気になったコウモリの赤ちゃんは、今にも飛び立ってしまいそうでした。

「キュッ、キュッ、カタカタカタッ。」コウモリの赤ちゃんが、発信しました。

すると、どこからか、母親コウモリらしきものが、飛んできました。

そして、仲良く、ツバメの巣から飛び立ちました。

一件落着。